≡ヴァニティケース≡
「いやだ先生。そんなわけないじゃないですか」
「ごめんごめん。25年も歳を取らないわけがないよな。これはお母様だな? それにしても、美鈴くんにそっくりだ。お母様はこっちの人なのかい?」
「それが違うんです。だからとにかくここに来てみたくて、無理を承知で先生にお願いしました」
「なるほど。では実際に来てみて、君は何を思った? なんと言うか、まあほら、その……デジャヴみたいなものは有ったかね?」
美鈴は一歩一歩、踏みしめるように、何かを確認するように境内を歩いて行く。石田は少し離れた所からそれを見詰めていた。
「美鈴くん。どうだい? 何か解りそうかな」
「……」
「美鈴くん?」