≡ヴァニティケース≡
そして次の瞬間。今度は全身に震えが起きた。それでも写真を凝視してしまったのは、やはり女性の美しさの所為だろう。女性は気品ある表情で美鈴に微笑み掛けている。
「ひどい悪戯っ」
今は新しい生活に期待を膨らませる時期だ。そんな折に異物に飛び込んで来られては、とても歓迎出来る筈はない。ミステリーは読んで楽しい物語かも知れないが、そうそう我が身に起きて良いものではないのだ。
「馬鹿馬鹿しい!」
美鈴は腹立たし気に吐き捨てると、写真を屑籠に投げ入れた。