魂の旅
僕は、にんじんが嫌いだ。

お母さんは「騙されたと思ってた食べて御覧なさい。

身体にとてもいいのよ」

って、言ったから、口の中に入れてみた。

もぐもぐもぐ。

ごっくん。

本当に騙された。

あんなにまずい物は、無い。

お母さんは、嫌がる僕の口の中ににんじんを無理やり押し込む。

こんなのは、拷問だ。

口がもぐもぐもぐ、と仕方なしに歯茎でかみ始める。

心が「別に大きくならなくてもいいんだけど」

と、言っている。

舌が、にんじんを上にのせたまま、首がお母さんの方へ向く。

目は「こんなものいらない、嫌だ」

と、訴える。

お母さんは、「まったく、仕方ないわね」

と言い、お父さんは、

「細かく刻んで、にんじんだと分からなくすればいい」と言った。

僕の心は、「もっとアイスクリ-ムみたいに甘くて美味しくて、幸せ一杯

なのがいい」と叫んでいる。

にんじんとの戦いは、まだまだ続きそうだ。
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