俺様王子のお気に入り
「…ん、わかった。それならいい。今日は何もなくて良かったな」
「あ、そ、だね。……送ってくれて、…あり、がと」
「どーいたしまして、鈴乃ちゃん。じゃ、また明日な」
「また明日…ってか、ちゃんって言うなー!」
私がそう叫ぶと、翔は笑いながら、逃げるように元来た道を戻って行った。
「…ふぅ…」
翔が見えなくなると、私は、紅から黒に変わりかけようとしている紫色の空を見上げながら、一つ、ため息をついた。
何、だろ。この、気持ちは…。
心の中に、すぐには消せない塊がある、って感じだ。
ドキドキが、モヤモヤに変わっていく。
そんな気が、した。