俺様王子のお気に入り
「言ったな?」
「――っ!!」
言ってしまってから、口を慌てて塞いだけど、もう遅い。
「じゃ、これからよろしく。桜木さん」
そう言って神崎翔は一瞬ニヤリと笑い、またいつもの“王子様スマイル”に戻して、ポケットに両手を突っ込みながら南校舎への渡り廊下を歩いていった。
一瞬青ざめた私の顔は、ふつふつと湧き上がる神崎翔への怒りによって、だんだんと赤くなっていった。
私はは込み上げる怒りを抑えながら、渡り廊下を悠々と歩いている神崎翔の背中に向かって、
「――…こんの悪魔めが――――ッ!!!!」
と、大声で叫んだ。
そんな私の声に答えるように、神崎翔は、前を向いたまま右手を挙げて、ひらひらと振りながら去っていった。