俺様王子のお気に入り
「こっち、向けよ」
「…」
何も言わずに、首だけ横に振る。
「…っ、じゃあ、向かせてやるよ」
ぐいっ
今度はさっきより強く、腕を引っ張られた。
予想していなかったことに、思わず私はよろけた。
それを翔が受け止めて、私の体の向きをくるりと変える。
そして、ずっと下を向いていた私の顔をくいっと指で上げると、私の顔を見て、翔は驚いたように、呟いた。
「…何で、」
「…何で、泣いてんだよ」
…見ら、れた。
私、今。
泣きそう、だったのに。