恋イチゴ
「ごめん…帰るか」
いや、ちがう。
ちがう、多分。
蓮は自分に言い聞かせた。
考えすぎだ。
ただ、今目の前にいるやつが、あまりにも弱っていたから、あまりにも小さかったから、手を差し伸べただけだ。
蓮は気持ちを落ち着かせようと深く息吐くと、同時に、希祈が自分の涙をゴシゴシ拭いて、大きく頷いた。
「…うんっ…!」
希祈はよくわからない不思議な感情を抱いていた。
少し恥ずかしくて苦しくて…でも、少し嬉しくて。
希祈と蓮の中に何かが芽生えた瞬間だった。
それが恋だとわかるのは、もう少し後の話…。