恋イチゴ
言わないから
「…はっ…くしゅん!」
……寒い…
…なんで来ないの!!
寒空の下、希祈はお気に入りの真っ白なマフラーを首にぐるぐる巻きつけ、校門で人を待っていた。
かじかんだ手をポケットにつっこんで、四角いものの存在を確かめる。
…返してやろうと思ってるのにさ。
希祈は少し背伸びをして、ふーっと息を吐いた。
白い煙がふわぁっと舞い上がる。
そしてすぐにその白い煙はあっけなく消えていった。
それだけのことが、今の希祈にとっては新鮮で、これから始まる1日にとてもワクワクした。
思わず口元が緩む。
なにもかもすべてのことが、キラキラして見える。
足が地に着いていないような、宙に浮いているような、フワフワした感覚。
何もないただの平日。
繰り返しの毎日。
それなのに…今日はこんなにワクワクしている。
希祈は自分の中の心境の変化を、しっかり感じ取っていた。
もちろん、なにが原因なのかも。
しかし、それが恋というものだと理解するには、初恋未経験な希祈にはまだ早いようだ。