恋イチゴ


倉橋は自分のクラスに着くと、着ていたブレザーを脱いで、無造作につかみ、バサッと椅子にかけた。

ストーブによってぬくぬくと暖められた教室は、窓が白く曇っている。


相変わらず生ぬりーなぁ。

倉橋は椅子に腰掛けて、思いっきりため息を吐いた。

希祈に似合う、と言われて買った、焦げ茶色のカーディガン。

今ではすっかりお気に入りで、登下校以外はいくら寒くてもブレザーを脱ぐことがクセになっていた。


よりによってあいつに拾われるなんて…と、つぶやいて、机に顔を伏せた。


ずっと、肌身離さず持っていた写真だった。
倉橋にとってそれは、御守りのようなもので…


なんで落としたんだろう…。


倉橋は、自分がその写真を落としたことが信じられなかった。

なにか…すごく嫌な予感がする。


思わず下唇を噛み締める。


「―倉橋、落ちた。」

そのとき急に、後ろから声が聞こえた。

振り向くと、いつもクールで無愛想な蓮が立っていた。

手には、さっき無造作に制服のポケットに突っ込んだ、生徒手帳があった。


椅子にブレザーをかけたときに落ちたのか。

倉橋はハッとして、すぐに自分のブレザーのポケットを探った。


「落とした、今。」


慌てる倉橋をよそに、蓮は相変わらずマイペースで淡々とそう言った。

すると、その瞬間。
手帳に挟まっていた何かが、ヒラヒラと中を舞った。

そしてそれは、重力によって、あっけなく床に落ちた。


―――例の写真だ。



倉橋が動きだしたときにはもう遅かった。

蓮は、倉橋より先にそれを拾った。



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