恋イチゴ
近づく距離
「…バイト?」
その頃希祈は、同じクラスの山下樹、通称いっきーと、ライティングの訳を写させてもらっていた。
希祈の親友、奈津のノートを見て、バイトの話で盛り上がっていた。
「うん。この間、ずっといたバイトの人が2人とも辞めちゃってさー。店長が、人件費安いから学生がいいって。探してこいって言われたんだ。」
樹と希祈は補習で仲良くなった赤点仲間。
"同じ匂いがする人間"として意気投合したのだ。
「うーん、でもあたし、失敗ばっかりだしなぁ…」
希祈が肩を下げてため息をつくと、樹は希祈の両肩をガシッっとつかんで、得意気に言い放った。
「大丈夫大丈夫!ちゃーんと助っ人用意してるしさ!」
俺に任せろ!と、希祈の気も知らずに満面の笑みでどーんと構える樹。
「…うん!やる!」
樹もいるなら安心だ、と、希祈はガッツポーズをした。