人形殺人事件
「なんですか、いきなりゴミにダイブして」


「驚いたんだよ!君が突然後ろから話し掛けてくるから」



優人が振り向くとまた、この殺風景に似合った男の姿が現れた。


「・・・・?はじめまして」


子供がみたら泣きそうだ。


本人はなんとも思っていないそうだが・・・


最後に着替えた日はいつだ?


服はボロボロで長袖だと思うがビリビリに破れている。


ズボンはダブダブで穴だらけ、ファッションでないことは一目でわかる。


靴下は履いているが穴があいて、何本か指がでている。


手足の爪も伸びすぎだ。


髪はボサボサ、伸びすぎた前髪と後ろ髪は何本か束にして結んである。


これもまた結びかたは雑で、ゴムは絡まって解けなさそうだ。


そしてなにより怪しいのが右目にされている眼帯。


このゴミの王国に相応しい王様だ・・・


優人は今度こそ悶絶しそうになるが、ハッと正気に戻り、ゴミの山から立ち直り、服についたホコリをはらいながら男の方に向き直る。


「どうも・・・草乃 優人といいます」


「俺はジャック・ダイヤモンドといいます」


ジャックという男は優人の前に手を差し延べてきた。


「・・・・・」


「握手ですよ?」


それは知っているが問題はそこじゃなく、何かの液体でもついたのかベトベトの手を差し出されても戸惑うだけだ。


「・・・あ、コレですか?」


優人の様子に気付いてベトベトの手を指す。


優人は頷くしかなかった。


「大丈夫ですよ。さっき紅茶をいれてきただけですから」


何が大丈夫だ?それにどうしたら手がベトベトになる紅茶の入れかたをしたのか不思議だ。


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