Distance‐マイナス5cm‐
「のんが料理できるなんて知らなかった」
「あぁ……、うん、たまに作るよ」
放課後、誠とスーパーに来ていた。
いつも叶チャンと来ていたスーパー。
誠と来るなんて思ってもみなかった。
誠に、今日は夕食の買い物しなくちゃいけないから先に帰っててってお願いした。
でも、今こうやって付き合ってくれている。
罪悪感で押し潰されそうだ。
「何作るの?」
「えと、ハンバーグかな」
「俺ハンバーグ超好き♪今度俺にも作ってよ」
「う、うん」
屈託無く笑う誠に更に罪悪感は増し、あたしは上手く笑えない。
玉ねぎを掴んだ手が微妙に震え、力が入らなかった。
「誠、重くない?」
「軽い軽い」
そう言って誠は、ハンバーグの材料が入ったスーパーの袋を持ち上げる。
「なんか、付き合わせちゃってごめんね」
「買い物デートとかイイじゃん。何か一緒に住んでるみたいで」
誠は本当に楽しそうに笑う。
あたしはそんな笑顔を見る度、胸がチクチクと痛くなった。