Distance‐マイナス5cm‐
あたしは深く息を吸い込んだ。
「バカ殿ーー!好きだよー!!」
俯せで廊下で寝転んでいた誠は勢い良く上半身を起こした。
そして顔を赤くさせ、呆気に取られている。
あたしはその顔が可笑しくて、愛しくて。
「バーーカ!!」
もう一度大きな声で叫び、トイレへ駆け足で向かった。
好きなのに、大好きなのに……
大好きな人を傷付けてばかりの自分が不甲斐なくて、
大好きな人を裏切った自分に腹が立って、
そんなごちゃごちゃな気持ちから溢れた涙が、見られないように……。