Distance‐マイナス5cm‐
おじさんが仕事で帰りが遅くなる時は、あたしが叶チャンのお父さん代わり。
おばさんは叶チャンが小さい時に出て行っちゃったから、叶チャンはおじさんと二人暮らしなんだ。
あたしも両親が共働きで帰りが遅いから、いつも夕ご飯は一人。
だから叶チャンと夕ご飯を食べる事は珍しくない。
でも知ってるんだ。
叶チャンは淋しがり屋のあたしの為に、一緒に夕ご飯を食べてくれてる事。
あたしが誘ったら、絶対断らない事。
本当はとっても優しい事。
「なんか新婚さんみたいだねぇ、あなた♪」
笑顔全開で叶チャンに振り返る。
でも叶チャンは冷めた目であたしを一瞥して……
シカトした。
無言の圧力かしら……
「あ、あなたぁ?」
あたしも負けじと背中に花を散らし、奥様スマイル。
「……………死ね」
ヒドッ!!
「嫌ですぅ、生きますぅ」
頬を膨らませて必死の抗議を試みた。
「……アホか」
言葉は冷たいけど、言いながらも叶チャンの口元は笑っていた。