Distance‐マイナス5cm‐

おじさんが仕事で帰りが遅くなる時は、あたしが叶チャンのお父さん代わり。


おばさんは叶チャンが小さい時に出て行っちゃったから、叶チャンはおじさんと二人暮らしなんだ。




あたしも両親が共働きで帰りが遅いから、いつも夕ご飯は一人。



だから叶チャンと夕ご飯を食べる事は珍しくない。





でも知ってるんだ。




叶チャンは淋しがり屋のあたしの為に、一緒に夕ご飯を食べてくれてる事。



あたしが誘ったら、絶対断らない事。




本当はとっても優しい事。






「なんか新婚さんみたいだねぇ、あなた♪」


笑顔全開で叶チャンに振り返る。


でも叶チャンは冷めた目であたしを一瞥して……



シカトした。



無言の圧力かしら……





「あ、あなたぁ?」



あたしも負けじと背中に花を散らし、奥様スマイル。




「……………死ね」




ヒドッ!!




「嫌ですぅ、生きますぅ」


頬を膨らませて必死の抗議を試みた。





「……アホか」




言葉は冷たいけど、言いながらも叶チャンの口元は笑っていた。
< 13 / 481 >

この作品をシェア

pagetop