Distance‐マイナス5cm‐
「何か、ムショーに暴れたくなってね……」
さっきまでの饒舌はどこへ行ったのか、最後の方の言葉は消えていった。
「暴れ……たんだ?」
「…………うん」
結夢の暴れてる姿なんて想像できなかった。
でもこのヘコみようだと、大分暴れたんだろうな。
「それで、今までナンパしてきた人達はみんなあたしから離れてってさ」
まぁ、大人しかった美人様がいきなり暴れ出したら、そりゃ逃げるよね。
あたしはそのナンパ男達に同情した。
「それが弱み?」
「まだ続きがあって……」
うん。と、あたしはまた促した。
「それまであたしの事なんて気にも掛けないで、ずっと焼くの担当してた天耶がね、暴れるあたしを止めてくれて。それから記憶がないんだけど、目が覚めたら自分のベッドの上で……もう朝になっててね。リビングに行ったらお姉に、天耶からって袋渡されてさ」
「何か入ってたの?」
「うん、二日酔いの薬とか、レトルトのお粥とか、コーヒーとか。あと……」
結夢は言いづらそうに、口ごもる。
「あと?」
「……手紙。メモみたいな」
そして頬を赤らめた。
「何て書いてあったの?」