Distance‐マイナス5cm‐
朝
支度を済ませ、いつもより50分も早く家を出る事にした。
誠の家までは、あたしの足で歩いて30分程。
誠はいつも、これくらいの時間に家を出てるのか……
誠がいつもしてくれている事を自分がしている事に、何だか嬉しくなった。
そーいえば、付き合ってもう二ヶ月経つけど、あたしは誠の家に行った事が無い。
と言うのも、あたし達が付き合い始めてからすぐ誠はバイトを始め、放課後も一緒に帰るだけだし、土日もあまり遊んだ事が無かった。
誠と顔を合わせるのは、ほとんどが学校と、学校と家までの数十分と、誠のバイト先のカラオケに遊びに行った時だけだった。
最初は、誠がバイトを始める事はイイ事だと思った。
でも今はすごく寂しい。
バイトなんかしてなかったら、放課後も土日も、もっといっぱい遊べるのに。
でも、そんな事本人には言わない。
誠は頑張っているから。
あたしは応援したい。
玄関の扉を開けると、いつも学校に行く時よりも、外は暗く寒かった。
鍵をしめ家の前の通りに出ると、いつも誠が待っていてくれる場所に人影があった。