Distance‐マイナス5cm‐







――あ……こんな時に……






思い出してしまう、叶チャンの事。







思っている事をいつも口に出しちゃうあたしの癖。



叶チャンはいつも

「妄想は頭の中だけでしろよ」

って苦笑した。






――何で被るのかな。


誠は叶チャンとは別の人なのに……


あたしの彼氏は誠なのに……


誠の事、大好きなのに……




「――のん?」


「……あ、何?」


気が付くと、誠が心配そうに顔を覗いていた。



いけないいけない。


叶チャンの事はもう考えないって決めたんだから。


あたしはダメだな……。


ちょっとした事で思い出してしまう。




あたしが好きなのは誠。


今幸せだなって思えるのは、誠がいるから。





誠はまだ少し心配そうな顔をしながらも、運ばれてきたコーヒーを店員から受け取った。


そして角砂糖の入った瓶に手を伸ばし、それをおもむろに四つ入れた。






「………………はッ!?」


あたしは誠のその行動に、思わず固まった。
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