Distance‐マイナス5cm‐


「ま、誠、今砂糖四つも入れた?」

「おう♪俺甘いもんとか好きだし」

そう言って、当たり前!と言う風に笑った。


「お子様はどっちよ」

「背に腹は替えられぬのだよ」

「それ使い方間違ってるからぁ」

苦笑するあたしに、誠はニヤけた笑顔で、五つ目の角砂糖をコーヒーに落とした。






知っていく。




少しずつ……。



誠の好みや、嫌いなモノ。




これからはきっと、角砂糖や甘いコーヒーを見る度、誠の事を思い出す。






増えていく。





少しずつ……。




誠との思い出、誠の情報。






そうやって知っていく。





少しずつ、







少しずつ………。














喫茶店を出ると、外はもう暗く、お昼に比べて一段と寒くなっていた。



あたし達は来た時のように、繋いだ手をポケットに入れ、誠の家に向かった。
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