Distance‐マイナス5cm‐
「よ、よろしくね、美姫チャン」
あたしは何とか笑顔を作って挨拶をした。
でも美姫チャンはあたしの顔を一瞥し、
「マコって趣味悪ッ」
と、呟いた。
――空気が凍った。
しゅ、趣味悪ッてどーゆう事かしら。
確かにあんたには顔じゃ及ばないかもしれないけど……。
あたしが引き攣った笑いを浮かべると、美姫チャン……美姫は、あたしとは対照的に勝ち誇ったような笑いを浮かべた。
……こいつ。
テーブルの下で拳を握った。
「お前の方こそ見る目ねーんじゃね。つかお前は帰れ」
誠はそう言って、口元だけで笑顔を作った。
誠、怒ってる?
いつもと違う誠に驚きもしたけど……。
あたしの為に怒ってくれてるんだ……。
そんなに怒ってくれる事が嬉しかった。
美姫には悪いけど、顔がニヤける。
「イヤよ。あたし帰らないから」
でも美姫は誠の言葉も気にせず、目の前の御馳走に手を伸ばす。