Distance‐マイナス5cm‐
もう、着いちゃった……。
あたしの家の前まで着くと、自然と会話が無くなった。
お互い向かい合って、どちらからもさよならを言わない。
――寂しい。
ただ一言、そう言えばイイのに。
――もっと一緒に居たい。
ただ、そう言えばイイのに。
「寒いだろ?早く家、入りな」
先に沈黙を破ったのは誠だった。
あたしを心配して言ってくれてる事が分かった。
でも、あたしはもっと誠と一緒に居たくて。
だけど、何も言えなくて。
「……ま、ことぉ」
伝えたい言葉の代わりに溢れたのは、誠への気持ちと、涙だった。
「……どーした」
そっと抱き寄せ、頭を撫でてくれる。
離れたくない。
もっと一緒に居たいよ。
涙を拭って、誠を見上げた。
「あのね、プレゼント、家に忘れてきちゃってね……上がってって」
あたしは必死に、誠と一緒に居られる口実を考えた。
ホントはプレゼントなんて、明日渡す物なのかもしれないけど、どーしても離れたくなかった。