Distance‐マイナス5cm‐
あたし、何こんな大胆な事してるんだ!
暗い家の中に入った瞬間、頭が冷静になった。
そしてそれと同時に、恥ずかしさと緊張が押し寄せてくる。
さっき誠が言った「ヤバイ」の意味を、頭が勝手に分析し始めた。
分析結果が出ると、今度は心臓が早鐘を打ち始めた。
「ヤバイ」って、「そーゆう事」だよね。
で、でも付き合ってるんだから当たり前の事だし、今までそーゆう事が無かった方がきっとオカシイんだ。
しかも二ヶ月も!
で、でもでもやっぱり心の準備がぁ!!
「のん、どーした?」
分析と妄想に夢中で、玄関に突っ立ったままのあたしは、誠の声ではッとした。
「あ、な、何でもないよ。あたしの部屋行こう」
そう言ってあたしは階段を上がり、自分の部屋に入って暖房を点けた。
「飲み物持って来るから、適当にくつろいでて」
いきなり慌て始めたあたしの態度に、呆気に取られている誠を部屋に残し、ドタドタと階段を下りてキッチンへ向かった。