Distance‐マイナス5cm‐
あたしは小さく深呼吸をして、誠の目を見た。
「誠、あのね」
“♪〜♪♪♪……”
あたしが次の言葉を言おうとすると、携帯から着信音が鳴った。
でもその着うたはあたしのじゃなくて。
誠が自分の携帯を開いて、溜め息を吐いた。
だけどイッコーに出ようとはしない。
「出ないの?」
「美姫からだし、どーせ早く帰って来いとかそんなんだろ」
そう言った誠の顔は、どこか疲れていた。
そんなに美姫の事、嫌なのかな……。
きっと美姫は誠の事がずっと好きで、誠もそれに気付いているのかもしれない。
でも、幼なじみを好きな気持ちとか、拒絶される事の辛さとか、あたしは色々分かるから……。
ライバルなのに、何だか他人事に思えなくて、何と無く美姫が、不憫に思えてきた。
「でも、出てみた方がイイんじゃない?心配してるのかも」
誠はあたしの顔と携帯を交互に見て、渋々電話に出た。
「何?……あぁ、そう」
やっぱり、早く帰って来てって電話なのかな。
「は?あぁー……」
誠はあたしの顔を伺うように見る。
な、何だろ。