Distance‐マイナス5cm‐


知り合ったのが早かっただけ……。

でも、その期間に何があって、誠がどんな人生を歩んできたのか、あたしは知らない。




だけど誠も、きっとあたしと叶チャンの事、同じように不安に思ってる。

それにあたしは叶チャンが好きだったし……。



それでも何も聞いてきたりしない誠は、大人だな。





自分の弱さや、誠の優しさに、自然と涙が溢れた。


それを隠す為に、誠の胸に顔を押し当てた。





でもバレちゃったのか、誠は何も言わずに優しくあたしの頭を撫でる。



「……誠、ごめんね」


甘えてばかりの自分が大嫌い。

この優しい手を裏切った自分が大嫌い。



「泣くなよ。俺はあいつに恋愛感情なんてないし、あいつが知っててのんが知らない事は、これから知っていって?俺が好きなのはのんで、他の誰も知らない俺を知っていって欲しいって思うのも、のんだけだから」


そう言って誠は、あたしをぎゅッと抱きしめた。




優しいね。


誠はいつだって、こんなあたしに優しい。



胸が張り裂けそうだよ。
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