Distance‐マイナス5cm‐


「誠ぉッ。ごめんねッ、ごめんなさいぃ……ふぇぇ……うぇぇ……うぅ」



いきなり大泣きし出したあたしに戸惑う様子もなく、誠は相変わらずあたしを抱きしめる。


あたしを抱きしめるその腕に、優しく力がこもった。



「あたしッ、あたしねッ……誠にッ、嘘ついて……叶チャン家に、行ったのぉ。誠をッ…裏切った…の……」



「……何か、されたの?」

さっきよりも、あたしを強く抱きしめる誠。


不安が、伝わってきた。



「…キス、された……」



誠の顔が、悲しみの表情に変わったのが分かった。



「だから、俺の事拒んだの?今も、俺の為に付き合ってくれてるの?」


「違うッ!違うよッ!!あたしがッ、あたしが今好きなのは誠だよッ……。叶チャンじゃない……。拒んだのはッ、誠に触れられたりすると、叶チャンの事……あの時の事、思い出しちゃうから……。誠を、嫌だって思ってたんじゃないの!」


あたしは流れる涙なんてそのままに、誠の顔を見て訴えた。


でも誠は、眉を歪めながら目をつむって、話を聞いていた。




嫌われちゃったよね……。


仕方ないよね……。
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