Distance‐マイナス5cm‐
お正月
「おはよう」
「のぞみ?おはよう」
リビングに下りると、お母さんがサンドイッチを作っていた。
「お父さんは?」
「昨日遅くまで飲んでたから、まだ寝てるわ」
お母さんは寂しそうに笑った。
今日は一月一日。
首筋のキスマークも消えそうな今日この頃。
世間ではお正月。
もちろん家でもそのはずなんだけど、大して変わらない。
朝ご飯は相変わらずサンドイッチだし、お正月の挨拶も普通に「おはよう」だし、お父さんはこんな日まで遅くまで飲んでるし。
でも、久しぶりにこの家に家族が揃っている。
あたしはお父さんもお母さんも嫌いじゃない。
ただ、親としての役割は果たせていないとは思うけど。
「あたしこれから初詣行くから」
「そう、いってらっしゃい」
あたしはお母さんの言葉を背中で聞いて、家を出た。
誠が迎えに来るのには、ホントはまだ時間があった。
でもお母さんと二人だけなんて、何話せばイイか分からないし。
お父さんもお母さんも、確かに嫌いじゃないんだけど、何を話せばイイのか分からない。