Distance‐マイナス5cm‐
「凄い人だねぇ」
近所にある、それなりに大きな神社には、普段考えられないくらい多くの人が集まっていた。
はぐれないように、誠はしっかりあたしの手を握ってくれる。
「のん、転ぶなよ」
「子供じゃないんだから大丈夫だよぅ」
そう言いながらも、雪が少し積もっている足場は悪くて、今にも滑りそう。
あたしが足を取られそうになる度、強く手を握ってくれて、振り返ってくれる誠。
美姫は遠慮無く、誠の腕に自分の腕を絡めている。
まぁ、危ないしね。
転ばれたりはぐれられたりしたら、そっちの方が大変そうだし。
自分に言い聞かせ、目をつむった。
「マコぉ、おさい銭ちょうだい」
賽銭箱の前まで来ると、美姫は甘えたようにねだった。
てかおさい銭くらい自分で出せよ!
人に貰ったら意味なくない!?
「美姫……チャン、五円持ってないの?」
例え五円でも、美姫にお金あげるなんてホントは嫌なんだけど、誠があげるよりは断然イイ。
なんて、凄い嫉妬心ね。
自分に呆れちゃう。