Distance‐マイナス5cm‐
バカ殿



「はぁ……」



昼休み。


あたしは今日何度目か分からない溜め息をついた。





昼休みになっても叶チャンからのメールの返事はなく、携帯片手に机に突っ伏した。


そんなあたしの目の前で、美味しそうに焼きそばパンを頬張る結夢。


「のんさぁ、そんなに気になるんだったら、今から謝りに行けばイイじゃん」


「……できないよ」


鳴らない携帯電話の画面をぼんやり見ながら、あたしは呟いた。



あたしだって、できる事なら今すぐ謝りに行って、

「付き合ってなんて冗談だよ♪」

って無かった事にしたい。


でもメールの返事もこないし、ウザいって言われた。



会いに行ったってウザがられるだけ。




「あたしさ、何回フラれても頑張るつもりだったんだ。叶チャンの事諦めるなんて絶対できないし。でも、それが叶チャンにとって迷惑な事なら……あたしはもう諦めるしかないよね。好きな人に迷惑掛けちゃいけないよね……」



今日半日、一度も閉じなかった携帯電話を畳んで制服にしまった。



「………難しいよね」



「……うん」



あたし達はそれぞれの方を向いて、無言になった。
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