Distance‐マイナス5cm‐
疑い
朝、あたしは一時間も早く家を出た。
誠はきっと、今日早く迎えに来ると思ったから、それよりも早く家を出ようと思った。
久しぶりに、一人で学校へ向かう。
昨夜新しく積もった足跡の殆どついていない雪を、踏み締めながら歩いた。
教室には誰も居なくて、誠はテスト開始ぎりぎりに教室に入ってきた。
教室に入ってくる誠と目が合って……
誠は悲しそうにしながらも、安心したような顔をした。
あたしを待っててくれたんだね。
「のぞみチャン、殿と何かあったの?」
「え?別に何もないよ……」
自分の席でぼーッとしてると、珍しく宮下クンが話し掛けてきた。
そういえば、宮下クンとは二人だけで話す事、あんまり無かったな。
「いやいや、今日一緒に学校来なかったし、のぞみチャンあいつの事避けてんじゃん」
「そんな事ないよ」
あたしは笑顔で返した。
それに対し宮下クンは、溜め息を吐く。
「あいつさぁ、ヤバイよ。死にそうな顔してんじゃん。あんな殿見た事ねーよ」
苦笑いする宮下クンの顔は、誠を心配する気持ちを隠しきれていなかった。