Distance‐マイナス5cm‐



放課後、結夢に一緒に帰ろうと声を掛けた。


でも

「誠とちゃんと話しな。話さないと、何も解決しないよ」

そう言われ、あたしはフラれてしまった。




でもさ、あたし、知りたくないんだよ。

現実を見たくない。


辛いんだよ……。



肩を落として教室から出ようとすると、誠に肩を掴まれた。





何だかこの光景、クラス委員の時と逆だね。


まだ付き合う前のあたし達を思い出して、また、胸が痛んだ。




あたしは何も言わずに俯き、教室に人が居なくなるまで、二人で無言で待っていた。










教室に人が居なくなってから何分かして、取り敢えず二人向かい合う様に座った。


それでもあたしは俯き、誠の顔を見ない。


もう丸一日、誠の顔をちゃんと見ていない。



「のん、話して?」



何で、そんなに震えた声なの?


何で、あたしに無視されたくらいで、そんなに辛そうなの?


何であたしなの?


何で誠はあたしを好きなの……。




誠の気持ちが痛い程分かって、自然と涙が溢れた。


その雫が、ポタポタと机を濡らしていく。
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