Distance‐マイナス5cm‐
あたし達が教室を出る頃には、もう辺りは真っ暗だった。
誠は相変わらずあたしを家まで送ってくれた。
でもいつもの帰り道とは違って、お互いあんまり喋れなかった。
だけどそれは気まずい沈黙とは違って、繋いだ手はやっぱりあったかかった。
美姫の事が解決したわけじゃないけど、あたしは誠を信じるから。
もう、そんな事はどーだってイイ事。
誠はきっとあたしを裏切らないし、あたしは誠を信じてる。
それだけでイイじゃん。
誠の背中を見送って家に入ろうとすると、隣の家の門が開く音がした。
叶チャン……。
あたしは思わず顔をあげると、予想通りの人と目が合った。
その人は、あたしと目を合わせたまま、淋しげに微笑んだ。
何だか、その表情が懐かしい。
叶チャンを、好きで好きで仕方なかった自分が懐かしい。
何だろう、この気持ち。
心が温かくなるような、でも締め付けられるような。
「……あ」
ホッとしたら、涙が零れた。
「のぞみ?」