Distance‐マイナス5cm‐
「……あ、そっか」
何なんだろう。
雪なんてほとんど毎日降ってるんだから、今日降ってても降ってなくても、気にする事じゃないのに。
「何かあるの?」
「んー、秘密。やんだら分かるよ」
そう言って誠は爽やかに笑った。
隠し事?
むぅ〜ッ。と睨んでみても、爽やかな笑顔は崩れなかった。
放課後、誠の願い通り、雪はやんでいた。
昼間もチラチラとしか降っていなかったから、あんまり積もったりはしていなかった。
「ねぇ、やんだけど何があるの?」
「まぁ、ちょっとついてきて」
誠はジャケットとあたしの腕を掴んで、自販機でホットココアを二つ買うと、屋上へ続く階段に向かった。
屋上に……何かあるのかな?
「屋上ってさ、冬の間は鍵しまってて入れないんじゃなかったっけ」
屋上に出る扉の前で、あたしは誠の後ろに立ちながら尋ねた。
そう、たしか屋上は雪が積もったり降ったりしてると開放されない。
雨の日もそうだし。
だから冬は開放できる時なんてほとんどないから、いつも閉まってるんだ。