Distance‐マイナス5cm‐



「のんに出逢えて良かった」



「……誠」



「誕生日おめでとう。生まれてきてくれて、ありがとう……」


あたしを抱きしめてる腕に、優しく力がこもった。





ねぇ、そんな事、今まで言われた事なかったよ。


あたしはいつも、誰かにとって必要な存在なのか自問してたよ。


そう言ってくれる人と出逢えた事は、奇跡だね。



「あり、がとう……」


頬に伝った涙が冷えても、両手で包んだココアが冷たくなっても、背中はずっとずっと温かい。



「ありがとう」


もう一度呟き、銀色に輝く、あたしの目には少し歪んで見える町並みを眺めた。


「雪、やんで良かった」



誠が耳元で囁いた。





これって、最高のプレゼントだね。


あたしも、誠と出逢えて良かった……。





何であたし、美姫の事であんなに不安になってたのかな。


今でも少し胸が痛む事はあるし、今年同じ高校になったら……なんて不安に思う事もやっぱりあるけど、その度に誠は、あたしを安心させてくれる。


もう、大丈夫……。
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