Distance‐マイナス5cm‐
「霧島の事さ……」
「……叶チャン?」
誠が叶チャンの話題を出す事なんて珍しい。
叶チャンの名前を聞いて、あの時の淋しそうな微笑みと、その次の日、誠が殴られた事が頭を過ぎり、心拍数が上昇した。
「俺が最初に、あいつを殴ったんだ」
「え、誠が?」
その時、お正月に見た叶チャンの顔を思い出した。
そういえば、殴られたみたいな痣があった。
あれは、誠がやったの?
でも何で……。
「年明け前に、ちょっとな……。でもあいつさ、思ってたようなヤツと違った。のんを、ちゃんと大切に想ってた」
――どーゆう事?
いまいち、あたしの頭はついていけてない。
「あいつは、俺がのんを悲しませてるって気付いたんだと思う。だから、俺は殴られた」
何で、叶チャンがあたしの事……。
「のん、まだ気にしてるだろ?俺が殴られた事。それに……公平にいきたいから」
叶チャン……。
叶チャンの気持ちが分からない。
叶チャンはいつだって優しくて、不器用だけど、いつもあたしの味方でいてくれた。
それが変わっちゃったのは、中学の卒業式からで……