Distance‐マイナス5cm‐
でもピロリンの笑顔からは、そんな負の感情みたいなのは見えなかった。
「霧島の事も相談されててさ。それで幼なじみのロリの事も聞かされてた」
「あ、だからあたしの事知ってたんだ……」
「そッ。で、嫌がらせメール送ったとか聞いてさ。その時はどついてやろうと思ったんだけど、その前に霧島が……」
「叶チャン?」
「霧島が嫌がらせメールの事気付いたらしくてさ、『次のぞみに何かしたら、ぶっ殺す』とか言ったらしいよ」
ピロリンは「真希もホントは悪い奴じゃないんだけどね」と付け足した。
だけどあたしの耳にはそんな事入らなくて。
――叶チャンが、言ってくれたの?
だからあの時、メールの相手をあんなに聞いてたの?
叶チャンが言ってくれたから、メールこなくなったの?
全てのつじつまが合った。
あたしは叶チャンに助けられてたんだ。
叶チャンはいつもそうだ。
いつも陰であたしを助けてくれて、表にはそんなの微塵も出さなくて。
怒りも、悲しみも、全部心の中に押し込めて。
ただ、大きくて温かい人。
カピバラってこれだよ。と携帯画面を見せてくれたピロリンに、複雑な笑顔をおくった。