Distance‐マイナス5cm‐
あたしの声に気付いて振り返った美姫は、声の主があたしだって事が分かり、あからさまに嫌な顔をした。
そしてあたしを無視して、さっきまでの態度とは打って変わった天使のような笑顔を、ナンパしてきた男子達に向けた。
「先輩達、すみません。美姫、ちょっと急いでるんで……本当に残念なんですけど、また今度でお願いします」
そう言ってもう一度極上のスマイルを向け、あたしの元に向かって来た。
「あなたに助けてもらいたくなんてないから。余計な事しないでくれる?」
――悪魔だ。
みなさーん、ここに天使の顔した悪魔がいますよー。
悪魔は天使のような笑顔をするんだったわね、マッチ!
あたしがそんなバカな事を思っていると、結夢がキレ出した。
「ちょっと、あんた何なの?口の聞き方っての知らないわけ?」
美姫は結夢を鼻で笑った。
「有坂先輩ですよね?先輩には関係ないですから」
そして、美人VS美人の睨み合いが始まったのでした。
きっと周りから見たら、美人二人が向かい合ってさぞ絵になるんだろうけど……
残念ながらあたしには火花しか見えません。