Distance‐マイナス5cm‐


“あんた2年の教室の前うろちょろして、何がしたいわけ?”

“人の男取って最低”


美姫は壁際に追いやられ、2年の女子に囲まれていた。

それでも悪びれたり泣いたりしないで、可愛い顔で女子達を睨んでいる。


“先輩達の男なんて知りません。興味もないし。フラれたからって、美姫に当たらないで下さい”


“何こいつッ!!”


美姫を囲んでいた一人が、顔を真っ赤にさせて美姫を殴ろうと手を上げた。





「ちょっと!やめなよ!」


あたしは気が付くと駆け出していた。


美姫と2年女子の間に入ると、上げた手は下げられた。


「あんたには関係ないでしょ。あたしはこいつと話してんの」


「あたしもこの娘に用があるの」


凄んでくる2年女子達は怖かったけど、あたしは負けちゃいけない気がした。


あたしも真希サンに、酷い事をされた。

それでもあたしを守ってくれる人がいたから、あたしは大丈夫だったんだ。


でも今この場に、美姫を守ってくれる人はいない。


美姫の事は正直苦手だけど、それでもあたしは、こうしなきゃいけない気がするんだ。
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