Distance‐マイナス5cm‐
叶チャンと早川サン
「誠今日バイトだよねぇ?」
「あぁ、5時からだから、家帰ってから1時間くらいしかゆっくり出来ないなぁ」
下駄箱のロッカーからローファーを出し、隣の列の下駄箱にいる誠と会話をしている。
何だか銭湯みたいで笑える。
て、銭湯なんて行った事ないけどさ。
あくまでイメージってヤツ!
「じゃあさ、あたしバイト先遊びに行くぅ♪一人カラオケするから」
「了解」
そう言ってあたし達は靴を履いて、昇降口で顔を合わせ、校舎を出ようとした。
ピーンポーンパーンポーン
『2年7組、遠野。職員室の斎藤まて来なさい。2年7組、遠野……』
あたし達がちょうど昇降口を出ようと足を踏み出した時、校内放送が流れた。
「あ、忘れてた」
ヤバイという顔をして誠は言った。
「誠何したのぉ?」
呼び出しなんて、また蟹でも教室に放ったとかぁ?
去年のその光景を思い出し、あたしはニヤニヤと誠を見た。
「担任に用事頼まれてたの忘れてた。ちょっと遅くなるかもだし……のん、先に帰ってる?」
「ううん、待ってるよ」
「ごめん」と頭を下げて駆けて行く誠を、笑顔で見送った。