Distance‐マイナス5cm‐
『いや、別に……起きてんのかなって思って』
叶チャン、嘘が下手だな……
この喧嘩の声が、隣の家にも漏れてる事、知ってる。
叶チャンのお父さんのバカ笑いだって、あたしの部屋まで聞こえてきちゃうんだから。
この喧嘩の声が、聞こえないはず、ないよね。
「起きてる起きてるぅ♪またドラえもん観てたよ。明日もまたからかわれるかも〜」
『ドラえもん飽きたら、いつでも電話しろよ』
「……うん。叶チャン、ありがとうね」
あたしも、嘘が下手だ。
『……別に』
「別にばっかり言わないでよぅ。てか何か、二人で話すの久しぶりだね」
『そーだな』
ちゃんと二人で話すのって、あたしが叶チャン家にハンバーグ作りに行った日以来じゃないかな……
あれからぎくしゃくして、同じクラスになっても何と無く上手く話せなくて。
『昔は、よく二人で馬鹿な事ばっか話してたな』
「……うん」
それが楽しくて、時間が経つのも忘れて、いつの間にか夜になってる事もよくあった。