Distance‐マイナス5cm‐
『小学生ん時のぞみイジメられて、大事にしてた練り消しパクられてたなぁ』
「違うよッ、あれはあたしを好きだった健太クンが、あたしの気を引きたくてしたんだよ」
『そーだっけかぁ?』
「そーだよ!それで叶チャンが……」
練り消し取り返す為に、がき大将の健太クンに喧嘩吹っ掛けて
「取り返してくれたんだよ」
ボロボロになりながら。
『全然覚えてねーや』
叶チャンの苦笑いが、電話越しに聞こえた。
何だか安心する。
二人だけの思い出。
毎日楽しかったな。
幸せだったな。
お父さんもお母さんも居て、叶チャンも居て。
それが、あたしの世界の全てだった頃が懐かしい。
あたしの世界が、まだ本当に小さかった頃から、叶チャンは隣に居てくれたね。
いつの間にか眠ってしまったあたしは、朝、携帯を耳に当てたまま寝ていた。
話してる途中で寝るとか有り得ないし!
テキトーにボタンを押すと、暗くなった携帯の画面に明かりがともった。
新着メール1件
『おやすみ』
一言だけの、顔文字も絵文字もないメール。
叶チャン……