Distance‐マイナス5cm‐

二人は口々に言った。



「あたし、別に何にもないよ」


あたしがそう言うと、二人は悲しそうな顔をした。




何で?




「あたし、そんなに頼りにならない?……あたしの前でそんな風に笑わないでよ」



結夢……


泣いてるの?



結夢の目は、涙で潤んでいた。



「笑えなくなる事より、泣けなくなる事の方が辛いんだって」


美姫はそう呟き、目を伏せた。






そう言えば、もう両親が喧嘩していても泣かなくなった。

涙が出なくなった。



叶チャンが電話くれるし、あたしは学校に来ればみんなと会えるし。






でも、辛いのかな、あたし……

あたしはちゃんと笑えていなかったのかな。



「のんの辛いの、あたしにも分けてよ。辛そうに笑ってるのんを見てるだけしか出来ないのが、一番辛いよ」


結夢……。


「あたしものぞみサンの、友達でしょ……」


美姫……。




どーしてあたしは気付かなかったのかな。


あたしの所為で、二人を悲しませてた。


あたしが「大丈夫」って言って笑う事で、悲しませてた。
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