Distance‐マイナス5cm‐


誠との帰り道。


あたしは今まで、どーして気付かなかったんだろう。

誠は眉を歪めて、悲しそうな顔であたしを見てる。



ずっと、そんな顔してあたしを見てたのかな。



笑えてないあたしの笑顔を、そんな顔をして見ていたの?




「……誠」



「……ん?」



「あたしが辛い時、笑顔にさせてくれるのは、いつも誠だったね……」



辛い時、いつも励ましてくれたのは誠だった。

弱音を吐くあたしを、いつも温かく包んでくれた。



「誠が辛い時、あたしも笑顔にしてあげたい……」


「……だったらッ。だったら、無理しないで」


「……ごめん」



あたしはそれだけしか言えなかった。


家の問題を、こんな真剣に、誠には話せない。





何と無く、そう思う。





「じゃあね」



そう言って家に入るあたしを、悲しそうな顔で見送っている事、知ってても。
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