Distance‐マイナス5cm‐

そんなあたしに優しく微笑んで、あやす様に頭を撫でる。


「すぐ戻るから。ちょっとだけ待ってて」



「……うん」



あたしはその微笑みに安心して、裾を離した。





叶チャンは嘘をつかない。


すぐ戻るって言葉を、あたしは信じられる。








一人になった部屋で、膝を抱えて考える。



親の事、叶チャンの事、誠の事、自分の事……




それは答えが見えそうで、でも手を延ばすと答えは消えてしまう。







ずっと夜寝ていなかったり、泣き疲れた所為で少しウトウトしていると、部屋のドアが開く音がした。



顔を上げると、叶チャンが立っていた。



「ホントに、すぐだったね……」



「のぞみん家行ってきただけだからな」


そう言ってあたしの隣に腰を下ろした。




あたしの家に、何しに?



そんな考えを見透かす様に、叶チャンは続けた。


「のぞみ預かるからって言ってきた。お前が落ち着くまで、ずっとここに居てイイから」






あ……



用事って……それ言いに行ってたの?



「ありがと……」



零れそうな涙を、顔を伏せて隠した。
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