Distance‐マイナス5cm‐

「今日はもう休めよ。ベッド、使ってイイから」



小さく頷くあたしの手は引かれ、立たされた。





あたしはベッドに潜り込む。





叶チャンの匂いがする。



安心する。





「傍に居て……」




ベッドに入ってからも握られたままの手に、あたしは力をこめた。






「……あぁ」






その言葉と、握られた手の温もりと、叶チャンの優しい匂いに包まれて、あたしは眠りに落ちていく。




“これからも、ずっと……傍に居てね”




“これからも、ずっと居るよ……”






あたしがそんな事を言ったのかも、叶チャンがそんな事言ってくれたのかも曖昧で、それは夢の中での会話だったのかも知れないけど



深い眠りに入る前、耳と心には、確かに優しい声が響いていたんだ……
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