Distance‐マイナス5cm‐
カーテンの隙間から漏れる朝の陽射しに、あたしは目を覚ました。
あまりの眩しさに、中々目が開けられない。
あたしは何とか薄目を開けてみると、床に座り、ベッドに顔を伏せた頭が見えた。
その人の手とあたしの手は、しっかりと繋がれていた。
あ……
ずっと、手ぇ握っててくれたんだ。
あたしは、これと似た体験を思い出した。
クリスマス、目が覚めると隣には誠がいて
握られた左手には、指輪が輝いていた。
今も変わらず、左手の薬指に輝く指輪。
でも今、その左手を握ってくれている人は誠じゃない。
もっと昔から、あたしの手を握っていてくれてた人。
座ったまま寝るなんて……
ボーッとする頭で、辺りを見回す。
昨日と同じ部屋。
叶チャンの部屋。
何だか、昨日の事が全て夢だったように感じたけど、この部屋で目覚めたって事は、紛れも無く現実だったって事を、あたしは理解した。
“♪♪♪♪♪〜”
あたしの目を覚まさせる様に、鞄に入れっぱなしだった携帯が、突然誠からの着信を知らせ始めた。