Distance‐マイナス5cm‐
「のぞみチャン、座って」
「は、はい……」
誠ママにリビングのソファーへ誘導され、そこに腰をおろした。
誠ママはオレンジジュースをあたしの前へ出してくれ、テーブルを挟んだ向かいのソファーに腰掛けた。
な、なんかやっぱり緊張する。
あたしは「いただきます」と言って、出されたオレンジジュースで、緊張からくる喉の渇きを潤した。
「うふふ、緊張なんてしなくてイイのよ。実はね、のぞみチャンにお礼が言いたかったの」
そう言って微笑む誠ママの綺麗な顔に、思わず見惚れた。
お母さんと言うよりは、お姉さんって感じだなぁ。
――じゃなくて!
「え、お礼ですか……?」
あたしは別に、お礼を言われるような事は何もしていない。
何だろ?
「えぇ。のぞみチャンのお蔭で、誠はホントに変わったの」
誠ママは、その綺麗な笑顔で続けた。
「中学の頃はいつも家に居なくて、たまに顔を合わせても、話なんてしてくれなくて……全然笑ったりもしない子だったの」
そーなの……?
今の誠からは、全然想像できない。