Distance‐マイナス5cm‐

「のぞみチャン、座って」


「は、はい……」


誠ママにリビングのソファーへ誘導され、そこに腰をおろした。

誠ママはオレンジジュースをあたしの前へ出してくれ、テーブルを挟んだ向かいのソファーに腰掛けた。



な、なんかやっぱり緊張する。


あたしは「いただきます」と言って、出されたオレンジジュースで、緊張からくる喉の渇きを潤した。



「うふふ、緊張なんてしなくてイイのよ。実はね、のぞみチャンにお礼が言いたかったの」


そう言って微笑む誠ママの綺麗な顔に、思わず見惚れた。



お母さんと言うよりは、お姉さんって感じだなぁ。


――じゃなくて!


「え、お礼ですか……?」

あたしは別に、お礼を言われるような事は何もしていない。


何だろ?



「えぇ。のぞみチャンのお蔭で、誠はホントに変わったの」

誠ママは、その綺麗な笑顔で続けた。

「中学の頃はいつも家に居なくて、たまに顔を合わせても、話なんてしてくれなくて……全然笑ったりもしない子だったの」



そーなの……?

今の誠からは、全然想像できない。
< 291 / 481 >

この作品をシェア

pagetop