Distance‐マイナス5cm‐
自問
「誠ぉ!おはよう♪」
いつもの様に家の前まで迎えに来てくれている誠に、あれからずっと深夜まで家族会議をしていたにも関わらず、あたしは元気に挨拶をした。
「おはよう。のん、元気になったみたいだな」
あたしが誠の元まで早足で行くと、誠はあたしの手を取って歩き出した。
「うん。色々心配かけてごめんね……誠のお母さんにね、色々話聞いてもらったの」
「……そっか」
明るいあたしの声とは反対に、誠は少し暗い顔をして俯いた。
元気ない?
「どーしたの?」
「いや、何か……俺、何も出来なかったなって思って、のんが辛い時……ごめんな」
誠はそう言って、寂しそうに笑った。
……あ
誠は、頼られてないって思っちゃったのかな。
何も相談しなかった事、気にしてるのかな。
「ううん!誠にはいつも心配かけちゃって……たまには自己解決しなきゃって頑張ったんだけど、結局誠のお母さんに頼っちゃった……」
何と無く家の問題を誠には話せないって思った事は、悟られちゃいけない。
「のんが元気になって良かったよ」
誠はまた、寂しそうに笑った。