Distance‐マイナス5cm‐
ずるいよ。
自分だって辛い時、あたしには言わないのに。
自己解決させちゃうのに。
あたしは、握られた手に力を入れた。
「あのね、誠はいつも、あたしに弱音吐かないでしょ……でもあたし知ってるんだ」
「……何?」
あたしが真剣な顔で誠の顔を見上げると、少し間をあけて、誠はあたしに顔を向けた。
「誠は我慢してる時、いつもそーゆう顔して笑う。言いたい事があるのに我慢してる時、いつもそんな顔してるよ」
知ってるんだから。
あたしに心配かけないように、自分の中だけで解決させようとしてる事。
でも、それって寂しいよ。
一緒に悩みたいよ。
今の誠の悩みが、あたしが原因なら、分かるよね?
だったら、尚更言って欲しい。
優しい言葉だけじゃなくて、辛い気持ちも、寂しい気持ちも、悲しい気持ちも、ちゃんと知りたい。
付き合うって、そーゆう事なんじゃないのかな。
あたしばっかり、おんぶしていたくない。
「……何で、俺に相談してくれなかったの?」
誠は足を止めて、あたしと向かい合った。