Distance‐マイナス5cm‐
2年2組の教室の前で誠と別れ、あたしは教室の戸を開けた。
教室の中は朝礼間際って事もあって、ほとんどのクラスメートは登校していた。
叶チャンは……いない。
叶チャンとはやっぱりちょっと、顔を合わせずらい。
あたしは「おはよう」と言い、何人かのクラスメートの、挨拶を返してくれる声に微笑みながら、前の席へ進んでいく。
「結夢、ピロリンおはよう♪」
まだ席替えをしていないあたし達のクラスでは、結夢の席は廊下側の前から三番目。
あたしは後ろから教室に入るから、結夢には後ろから挨拶をする。
ピロリンは結夢の前の席を勝手に陣取っているものの、結夢に軽くあしらわれているようだ。
「のんおはよう」
結夢は振り返って挨拶を返してくれる。
「おーッす、ロリわサン」
「ピロリン、しつこい!」
「俺はしつこい男なんだよ」
あたしと結夢は、もちろん「ウザッ」と言った。
ピロリンは結夢の事が好きなのか何なのか(もしかしたら叶チャンに警戒されない為のカモフラージュかもと言う噂もある、あたしの中だけで)、いつも結夢にちょっかいを出している。