Distance‐マイナス5cm‐


砂浜が近くなり、水位もあたしの胸下あたりになった時、誠は足を止めた。





「やっぱ、海に入ってよっか」


「え、何で?」






「……何でも」



あたしはそのまま、また沖の方へ引っ張られる。





あの、あたしこれ以上浸かってたらふやけちゃうんだけど。




なんて心の訴えも届かず、水があたしの体をほとんど隠した時、やっと引っ張るのをやめてくれた。







「何で戻って来ちゃったの?」




「……海の中入ってれば、水着姿見られないだろ」




「……へッ?」





あたしが聞き返すと、誠は顔を赤くした。




「取り敢えずダメだからッ」



そして顔を背けた。





そーいえば、去年の文化祭の時も……



あたしのドレス姿見て、誰にも見せたくないって言ってたっけ。



結構、独占欲強いんだねぇ。



「了解♪」



あたしも、他の人には、誠をあんまり見られたくないから……。





それからしばらくして結夢達に呼ばれるまで、あたし達はずっと海の中だった。
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