Distance‐マイナス5cm‐
「もしも〜し、結夢どーしたの?」
あたしはいつもの様に明るい口調で電話に出た。
でも、結夢は少し間を置いて応えた。
『……のん、今何してる?』
覇気のない結夢の声。
何かちょっと、様子が変?
「今ねぇ、誠と夏休みの宿題やってたよ。夜から花火なのにさぁ」
『そっか。みっちり勉強教えてもらいなね。じゃあねぇ』
結夢はさっきとは違う明るい声でそう言うと、電話を切られた。
「え、結夢?」
携帯からは、
ツーツー……
という音が聞こえる。
何だったんだろ。
様子が変だったのは……気の所為?
最後、普通だったもんね。
携帯画面を眺めながら首を傾げてみても、結夢が何の為に電話してきたのかは分からなかった。
それからまた勉強を再開していると、外から激しい雨の音が聞こえ始めた。
窓の外を見ると、真っ黒い雲が空を覆い、雷が鳴り響いた。
「花火大会……」
呟くと、誠はあたしの頭をぽんぽんと撫でた。
今夜の花火大会は、中止になった。
楽しみにしてたのにな……